永遠の運命

只生きていた。

はじまり。

始まりは単純だった、心の寂しい二人が出会い恋に落ちる。

いつの世だっていつの世界だってそれは必定。常にある良く在るはなし。定め。

運命なんてロマンチックな言葉で語る気はサラサラないけれど、強いて言うならあれはそう、起こるべくして起こった事故のようなものだった。

人に救われたくて、人を理解しようと努力し続けた人間と、

人が理解できなくて、自分の言葉を上手く紡げない人間が出会ってしまった。

これは不幸な事故、もしそうなら私の苦しみを精算してほしいという願いは

不当な請求なのかもしれない。過払い金は戻ってくるなんてCMを昔良くみた気がする。あれと同じ。でも私はなにも貸してない。私は無性で与え続けた。

今思えばそれが間違っていたのかもしれないけれど、あの時の私にはそれを間違いと思えるだけの自尊心が足りなかった。ひどく。他者へ尽くす事や奉仕することが正しいと思いこんでいたのだ。

 

しかしそれは間違い。私は自分の身を投げ売って そう 文字通り 投げ売りにするようにぞんざいに扱って あの人へ奉仕した。もちろん、私だって色々と求めたが、私のは相手への奉仕を前提にした要求。 言い直すなら、関係性のなかで相手への気遣いを前提にしたおねがいや 求め。 なんの強制力もない。

 

あの人は自分が美しいと知っていた。傷つくことで人が見てくれる事も知っていた。

また、人を捉える蜘蛛の巣のような生き方も知っていた。私がそれに気づかなかった。

私はまたたく間に蜘蛛の巣に囚われ 生きながらに飼い殺しにされた。

しかし知っているだろうか。

蜘蛛のメスは蜘蛛のオスをくらい尽くす。 それは生きるための手段なのだろう。

けれど、人がそれをやっては 人ではなくなってしまう。

あの人は 人の革をかぶり、弱者の革をかぶったなにかだったのだと、いまでも良く思う。 弱みをみせれば漬け込まれる。じぶんの呪いを武器にする。まるでモンスター。

 

恐ろしい人だった。美しい人だった。

けれど、弱い人だった。でも同時に、強い人だった。

その上無知な人だった。そして人に賢く見せることに長けていた。

理解していないことを表現しない事に長けていた。

理解しているふりを重ねて生きていた。

 

私は蜘蛛に捕食されて 死に至ったが 周りは私を罵り あの人を守った。

誰も私の心の苦しみには気づかずに。